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IFRS 16 貸手の会計処理|ファイナンスリースとオペレーティングリースの区別


目次

こんな経験はありませんか?

  • 貸手としてリースを提供しているが、ファイナンスリースとオペレーティングリースのどちらに分類すべきか判断基準がわからなかった
  • サブリースを行っているが、中間借手としての会計処理をどう行うべきか迷った
  • 製造業・ディーラーが貸手の場合の販売利益の認識タイミングがよくわからなかった

この記事でわかること

  • ファイナンスリースとオペレーティングリースの分類基準と5つの判断指標
  • ファイナンスリースにおける正味投資額の測定と利息収益の認識方法
  • サブリースの会計処理と中間借手としての注意点

対象読者

  • リース資産を保有・提供する立場(貸手)にある企業の経理・財務担当者
  • ファイナンス会社・リース会社・製造業でリース販売を行う企業の担当者
  • サブリース取引を行う企業の経理担当者

貸手の会計処理:IAS 17との継続性

IFRS 16で最も重要な変更点は借手の会計処理であり、貸手の会計処理はIAS 17とほぼ同様です。貸手は引き続きリースをファイナンスリースとオペレーティングリースに分類し、それぞれ異なる会計処理を適用します(IFRS 16.61)。


リースの分類:ファイナンスリースとオペレーティングリース

分類の基本原則

貸手はリースを以下の基準で分類します(IFRS 16.62)。

ファイナンスリース: 原資産の所有に伴うリスクと経済価値のほぼすべてが借手に移転するリース

オペレーティングリース: ファイナンスリース以外のすべてのリース

5つの判断指標

IFRS 16.63では、以下の状況が単独または組み合わせで存在する場合、通常ファイナンスリースに分類されることを示しています。

指標内容
① 所有権移転リース期間終了時に原資産の所有権が借手に移転する
② 割安購入オプション借手が割安な価格で原資産を購入できるオプションを有し、行使が合理的に確実
③ リース期間リース期間が原資産の経済的耐用年数の大部分を占める
④ 現在価値基準リース料総額の現在価値がほぼ原資産の公正価値と等しい
⑤ 特殊仕様資産原資産が借手のみが使用できる特殊な仕様であり、大幅な改造なしに他の借手が使用できない

追加的な判断指標

IFRS 16.64では、以下の状況も単独または組み合わせでファイナンスリースへの分類を示唆するとしています。

  • 借手がリースを解約した場合、解約に伴う損失が借手に帰属する
  • 残価の変動から生じる利得・損失が借手に帰属する
  • 借手がリース期間終了後に市場より低い賃料で更新できる

判断が難しいケース

これらの指標はあくまで例示であり、最終的にはリースの経済的実質に基づいて判断します。例えばリース期間が経済的耐用年数の75%未満であっても、他の指標からリスクと経済価値のほぼすべてが移転すると判断される場合はファイナンスリースに分類します。


ファイナンスリースの会計処理

当初認識

ファイナンスリースの貸手は、リース開始日に**正味投資額(Net Investment in the Lease)**をBSに資産として認識します(IFRS 16.67)。

正味投資額 = リース料の現在価値
           + 非保証残価の現在価値

使用する割引率はリースの計算利子率です。

利息収益の認識

正味投資額に対して、リースの計算利子率に基づく一定の利回りを反映するよう、利息収益を認識します(IFRS 16.75)。これはリース期間全体にわたる実効金利法の適用です。

計算例:

取得原価500万円の設備を3年間リース。月額リース料10万円。計算利子率2%(月次)。

期間期首正味投資額利息収益(2%)リース料回収期末正味投資額
1ヶ月目5,000,000100,000100,0005,000,000

実際の計算は実効金利法で行うため、各月の利息と元本回収の内訳が変動します。

製造業・ディーラーが貸手の場合

製造業者・ディーラーが貸手としてファイナンスリースを提供する場合、リース開始日に以下の2つの収益を認識します(IFRS 16.71)。

① 販売利益(または損失):

販売利益 = 公正価値(またはリース料の現在価値のうち低い方)
         - 原資産の原価または帳簿価額
         + 非保証残価に係る原価の控除

② 金融収益: リース期間全体にわたって、正味投資額の実効金利法による利息収益を認識します。

なお、製造業者・ディーラーが提供するファイナンスリースの計算利子率は市場金利を反映する必要があります。市場金利より低い利子率を使用することで販売利益を水増しすることを防ぐためです(IFRS 16.74)。


オペレーティングリースの会計処理

原資産の保持

オペレーティングリースの貸手は原資産をBSに保持し続け、当該資産の性質に応じた会計基準(IAS 16・IAS 40等)に従って会計処理します。

リース収益の認識

オペレーティングリースのリース収益は定額法または別の合理的な方法で認識します(IFRS 16.81)。リース料の受取りパターンが定額でない場合でも、収益は通常定額で認識します。

初期直接コスト

オペレーティングリースの貸手が負担した初期直接コストはリース資産の帳簿価額に加算し、リース料の認識と同じ基準で費用化します。


サブリース

サブリースとは、借手が原リースから取得した原資産の使用権をさらに第三者(エンドユーザー)にリースする取引です。サブリースを行う中間借手は借手と貸手の両方の立場で会計処理を行います。

中間借手の会計処理

借手としての処理(原リースに対して): 原リースについてIFRS 16の借手の規定に従い、使用権資産とリース負債を認識します。

貸手としての処理(サブリースに対して): サブリースをファイナンスリースかオペレーティングリースかに分類して処理します。

サブリースの分類

サブリースの分類は、原資産ではなく原リースから生じる使用権資産を基準として行います(IFRS 16.B58)。

したがって、原リースの期間とサブリースの期間の関係が重要な判断要素となります。

  • サブリース期間が使用権資産の残存期間のほぼすべてを占める → ファイナンスリースに分類される可能性が高い
  • サブリース期間が使用権資産の残存期間の一部のみ → オペレーティングリースに分類される可能性が高い

サブリースがファイナンスリースに分類される場合

中間借手は使用権資産の認識を中止し、代わりにサブリースの正味投資額を認識します。

(借)サブリース正味投資額 ××   (貸)使用権資産 ××
                                  差額(損益)××

J-GAAPとの主な相違点

論点IFRS 16日本基準
分類基準リスクと経済価値のほぼすべての移転同様(ただし数値基準あり)
製造業・ディーラーの処理販売利益と金融収益を分離認識同様
サブリースの分類基準使用権資産を基準に分類原資産を基準に分類
オペレーティングリース収益定額法が原則同様

日本基準との最大の相違点はサブリースの分類基準です。日本基準では原資産を基準とするため、IFRS 16とは異なる分類結果になる場合があります。


まとめ

貸手の会計処理で押さえるべきポイントは以下の通りです。

  • 貸手の会計処理はIAS 17とほぼ同様。ファイナンスリース・オペレーティングリースの二分法を継続する
  • ファイナンスリースの分類は5つの指標を参考にしつつ、経済的実質で最終判断する
  • ファイナンスリースの貸手は正味投資額をBSに認識し、実効金利法で利息収益を認識する
  • 製造業・ディーラーは販売利益と金融収益を分離して認識する。市場金利より低い計算利子率の使用は認められない
  • サブリースの分類は原資産ではなく使用権資産を基準に行う点がIFRS 16の特徴

次回はIFRS 16の開示要件を解説します。借手・貸手それぞれの注記として何をどこまで書くべきかを整理します。


IFRS学習をさらに深めたい方へ


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